齋藤的文学のすすめ

2016/03/03

小話どーん!

先日電子書籍のクーポンが届いたので、なんとなくすっごく軽い気持ちで読める小説が欲しくて、

第2位になっていた林真理子氏の本を購入したんです。

メディア露出が多い方なのでもちろん知ってはいましたが、

全然読んだことがなく、何とは無しに買ってみたんです。が。

電車の中では絶対に読めない官能ぶり。

スマホってものすごく遠くからでも何見てるか見えるし。

ええ、びっくりしました、正直。

いつも思うんですが、官能的な描写って、すごいですよね。

最近どこかの問題集かなにかも例文が卑猥だとか言って話題に上がってましたけども。

「そんな例え方あるか!?」っていうのが続くともうダメ。

心の中で大爆笑です。全然物語に入り込めない。

スクリーンショット-2016-03-03-10.50.20

私はさすがに靴下はちゃんと履いてますけど。

 

その点、谷崎の処女作「刺青」はすごいですね。

5149X5HR6FL

まず、装丁が秀逸。私は大好きです。シルクのガウンにしたい柄。

 

内容は、まあ、彫り師清吉は変態なんでしょうけど、

 

「拇指(おやゆび)から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、絵の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような踵(きびす)のまる味、 清冽な岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢。」

どうでしょう。これ。

持て余した才能が爆発した気持ち悪い描写とも取れますが、

でも、やすやすと目に浮かぶその情景、私は初めて読んだ時圧倒されました。

「すべて美しい者は強者であり、醜い者は弱者であった。」

今なら大炎上しそうなこの一文に、谷崎の思いが詰まっているんだと思います。

 

基本的に私は入れ墨というものになんの感想も持ち合わせていません。

犯罪者を識別するもの、部族・集団をカテゴライズするもの、肉体の付加価値を上げるためのもの。

事実、それ以上でも以下でもないと思います。

でも、この「刺青」で女は入れ墨をきっかけに内なる一面を掘り起こされ、

別人格と言ってもいいような変貌を遂げる。

痛みや発熱に耐え、しかも生涯消すことのできない傷をあえて負うわけです。

そこの精神的経験と言うのは、一つの価値観を共有する場面に於いては

非常に有効なアピールとなるんだろう、と思います。

そして、重要なのは明治政府は入れ墨を禁止していたという時代背景です。

とにかく、「刺青」もし読んだことがない方はぜひ!とても短いので。

ちなみに春琴抄は青空文庫で無料で読めます。

 

そして林さんをただ批判した感じになっちゃってますが、

読みやすく、わかりやすく、需要に応えていて、

非常に時代にあった素晴らしい作家さんだと思います。はい。