だって可愛いんだから仕方ないだろう

2016/03/29

小話です。

春になると、島崎藤村のこの詩を思い出します。

内容だけ見るときっと秋の詩なんですが、甘酸っぱさが、どうしても春に結び付いちゃうんだと思います。

『初恋』

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

 

 

 

音読するとまたいいですね。

韻の踏まれる箇所は特に気持ち良く、喉がグッと鳴ります。

冷静に読むと、「なんか…この女子…あざとくないか?」ってなるんですけど、

(自分たちの逢瀬のせいで踏み固められできた道を「誰が作った道なのでしょうね?」的な質問をしているわけです。)

そこは、この、男子が「そんな質問をする君がかわいい!好き!」と思っているところが醍醐味なんですよね。

いつの時代も男子はぶりっ子が好きなんですね。

時代を考えるとハッピーなだけの恋愛なんていうものは考えづらいし、

りんごの暗喩や、技法など言い出すとキリがなく、しかも

あの『破戒』を書いた藤村の詩、と考えるとなんだかあまりに

幸福感際立つ詩なんですが、

そんなことは抜きにしても、好きな詩です。

関係ないうちの犬

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